2008年 03月 3日
transit
ひな祭りの実感ない3日だ。
入稿の狭間を狙い、王子ホールへかっ飛ぶ。
ネットで確認するまで王子ホールは王子だとばかり思っていたが、東京:銀座のど真ん中にあるのだった。
バッハ:リュート組曲第1番_ホ短調_他の演目で、オーガニックな演奏を聴かせてくれる、“下町”が“日本”が世界に誇るクラシック・ギタリスト:村治佳織のコンサート会場へ。
ここのところ、彼女のチケットは入手困難で、本日もソールド・アウト。
ユニバーサル担当:T氏のチケットを強引に奪い取り、観戦する機会を得る。Tさんサンキュ!
王子ホールでの『transit』コンサートは、2005年よりシリーズとして継続される人気プログラムの1つ。
彼女のインタビューによれば…「バッハの作品は小学生の頃に「プレリュード・フーガ・アレグロ」BWV998より『プレリュード』を弾いたのが最初で、その後コンサートプログラムに1曲入れ込むことは時折あったのですが、コンサートの一部が丸々バッハという機会はありませんでした」とのこと。
今年は、ドイツにて管弦楽団とバッハ作品を演奏する予定もあるようなので、「私にとってはバッハ・イヤーです」とも語っている。
現代音楽の分野において世界的にその名を知られ、日本を代表する作曲家である武満徹によるギター作品が前衛的に聴こえ響く。
構成、アレンジを聴き、理解する体力・スキルを有することが必要だと、特にトリッキーな演奏部分の技巧に目を見張りながら集中して拝聴。
演奏中、曲のうねりに身を委ねるように、時に厳格に、時に優雅に、時にトリッキーにとギターを操る村治佳織。
ある境地に到達した者だけが醸し出せる、メンタルな意味をも含む超絶技巧が今日も圧巻だった。
演者の醸し出すウェーヴに観客も自然と同調し、曲の有する物語の起伏に取り込まれるような感覚を味わった。
アンコールで演奏してくれた「オーヴァー・サ・レインボウ」のしみること。
“語るよりギターの方が上手”なジェフ・ベック・バージョンの同曲ともまた趣向の違う、優雅で繊細な旋律が胸に沁みた。
彼女も、言葉で語る以上にギターで語る表現の方が雄弁なのかもしれない。
おいらのようなロック畑のみの者には、すべてが勉強不足だと自覚をせざるを得ない内容ながら、彼女の紡ぎ出す世界観だけは、およそ15年前から欲する感覚を継続させてくれるのだ。
それは彼女の持つ演奏スキル、雰囲気、動き、言動、声質、音質、容姿、環境、すべての要素が融合し、化学反応を起こして感じさせるものだ。まさに言葉では言い表せない村治佳織独特の魅力を感じてしまうのだ。
村治佳織は演奏中も演奏後も心の瞳を大きく見開き、すべてを見渡していた。
一見簡単な行為かと思われがちだが、この境地にたどり着いていないプロ・ミュージシャンなど大勢いる。
あらゆる世界の景色全てが見えきった瞬間、あるいは見渡せる余裕を得た瞬間、音楽家は本当の意味でのトップ・ミュージシャンという位置に到達するのだと思う。
メンタル面で最上級のポテンシャルを有する村治佳織の行方は果てしなく厳格で壮大なものだ。
投稿者 yonezawa : 2008年03月03日 14:30
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